水曜の夕食でチキンカツを食べているとき、左下の奥歯が欠けました。「ぺきっ」と音がしました。
一週間ほど前から、咀嚼の際にツボにはまると鋭い痛みが走るようになって、知覚過敏がまた進んだのかとうんざりしていたところでした。
高校3年の冬、私は複数の大学入試のために大田区に住む叔父夫婦を頼って上京し、3週間ほど滞在させてもらうことになっていました。
近所の書店で「BOMB!」の菊池桃子特集号を買って、息抜きに読んでいたのを覚えています。
何日目かの夕食にほうれん草のお浸しが食卓に上り、それを咀嚼しているときに右上の奥歯が突然折れました。それまで特に痛みがあったわけではなかったので、びっくりしました。
その翌日に、期末試験を無視して上京したことが学校にも親にもバレて千葉県に強制送還されました。おまけに自宅の机に隠しておいた煙草も見つかっていました。
父親同伴で学校に謝りに行きましたが、担任も学年主任もそれほど怒りませんでした。私は下から数えたほうが早い成績だったし、模擬試験の判定は全志望校「E」でした。
東京に戻ってからの叔父の雷がいちばん大きかった。
「ばあさんを悲しませるようなことをするな」。
私の合格を一番望んでいるのは祖母だと、私自身がよくわかっていました。
奇跡的に一校だけ引っかかりました。
担任が目を丸くして驚いていました。
歯が欠けて、そんなことを思い出しました。